SERIALIZATION

14 November 2020
『自由を奪われた国・カンボジアの真実』第1話
長年にわたり、志を応援していただいている秋田魁新報紙面にて、私の新たな新聞連載が2020年11月14日から開始となりました。毎週土曜日、1ページ全面での大きな掲載となります。秋田魁新報社とLINE NEWSを通して先日に発表をさせていただいた特集記事『アンコールワットのにぎわいの陰で..自由を奪われた国・カンボジアの真実』は、発表から4日間で33万回以上のご閲覧をいただくことができました。新聞連載は、この特集記事に内容を追加し、この数年間、カンボジアの現場で見つめ続けてきた新たな一党独裁支配に至る弾圧の事実と、公正な社会を求めて、圧政に命をかけて立ち向かう人々の願いを写真と文章で綴る、全6回のシリーズです。最大野党の解党、メディアへの弾圧、政治評論家の暗殺、活動家の投獄。近年の取材で感じてきた、息の詰まるような抑圧と緊張の日々は、ポル・ポト政権、内戦後、カンボジアの人々が困難の中で懸命に積み重ねてきたはずの民主が破壊されていく様を、一つ一つ見せつけられるような時間でした。新聞連載は、その悔しさの中で、歯を食い縛りながらシャッターを切り続けた記録です。それは同時に恐怖無き自由と平和を願い弾圧に立ち向かう、勇気ある人々と共に歩ませていただいた、忘れ得ぬ時間でもあります。思いを込めた新聞連載を、少しでも多くの方々にご一読、ご紹介いただければ幸いです。

28 November 2020
『自由を奪われた国・カンボジアの真実』第3話
私の新たな新聞連載『自由を奪われた国・カンボジアの真実』の第3話をご掲載いただきました。第3話は政権の圧力によって廃刊に追い込まれた内戦後初の日刊英字紙「カンボジア・デイリー紙」の話を中心に、この数年間、現場で見つめ続けてきたメディアへの弾圧を描きました。カンボジア・デイリー紙は、内戦後初の日刊英字紙として、米誌『Newsweek』の日本支局長を務めた米国人ジャーナリストによって第1回総選挙が行われた1993年に創刊されました。ポル・ポト政権と内戦によって破壊されたカンボジアのジャーナリズムの復興を目的に、新たな国づくりと民主化構築を象徴する代表的な新聞社でした。政権から時に名指しで脅迫を受けながらも、公正な意志を貫き続け、私自身も2014年から約3年間、政権の弾圧に立ち上がる人々の姿を中心に、同紙に写真を掲載していただきました。しかし、2018年の総選挙を前に、市民社会への弾圧を一層強めていた政権は、カンボジア・デイリーに真偽不明の巨額未払い税を突如突きつけ、2017年9月4日に、同紙を廃刊に追い込みました。政権にとって望まぬ声が社会から奪われ、人々は本音を避けるために口を閉ざし、沈黙する社会の中で聞こえてくる声はいつしか、政権のマウスピースと呼ばれる御用メディアからの、政権を擁護し讃えるものだけとなっていきました。2017年の9月は、今振り返ると、独裁が鮮明に社会の中に顔を出した、暗黒の9月だったと感じています。秋田魁新報社とLINE NEWSを通して発表させていただいた特集記事『アンコールワットのにぎわいの陰で..自由を奪われた国・カンボジアの真実』と併せてご高覧いただくことができましたら幸いです。

21 November 2020
『自由を奪われた国・カンボジアの真実』第2話
私の新たな新聞連載『自由を奪われた国・カンボジアの真実』の第2話をご掲載いただきました。第2話は、2020年の時点で35年間首相が変わらぬ長期強権支配を続けるフン・セン政権による市民社会への脅迫と抑圧の現状を中心に描きました。最大野党を解党に追い込み断行された2018年の総選挙で、フン・セン政権は新たな一党独裁体制に突入しました。政権に異を唱える人々への恒常的な脅迫、襲撃、弾圧、投獄が続き、30人以上の野党関係者、人権活動家が今をもっても、不当な投獄下で自由を奪われ、130人を超える野党関係者が扇動罪や陰謀罪などの罪を着せられ、自由な意思を抑え込むための裁判が始まっています。これら一連の組織的な弾圧を見て、国連人権高等弁務官事務所は抗議の声明を発表しています。秋田魁新報社とLINE NEWSを通して発表をさせていただいた特集記事『アンコールワットのにぎわいの陰で..自由を奪われた国・カンボジアの真実』と併せてご高覧いただくことができましたら幸いです。

5 December 2020
『自由を奪われた国・カンボジアの真実』第4話
私の新たな新聞連載『自由を奪われた国・カンボジアの真実』の第4話をご掲載いただきました。第4話は現代カンボジア最大の社会問題の一つである土地強制収奪問題と、その不条理に命をかけて抗い、カンボジアの人権・平和運動の象徴的存在となった活動家テップ・バニーさんの物語を描きました。フン・セン政権は、国内外の開発業者と癒着し、人々に強制移住を迫り、都市開発を推し進めている。人権NGOの調査では、2000年以降77万を超える人々が土地強制収奪の被害に遭った。抗議の意思を示せば、警察や軍が動員され、時に発砲を伴う武力弾圧が実行される。テップ・バニーさん自身も土地強制収奪に巻き込まれ、抵抗運動に身を投じた一人。住民のリーダーとして権力の横暴に立ち向かう彼女の姿は、フン・セン政権の人権弾圧に対するカンボジアの平和運動のシンボルとなっていった。しかし、市民社会への弾圧を強める政権は2016年8月15日、5人の人権活動家たちの釈放を求める集会を開いていたテップ・バニーさんを強引に連れ去り投獄した。圧政と闘う人々への見せしめといえるような出来事だった。秋田魁新報社とLINE NEWSを通して発表させていただいた特集記事『アンコールワットのにぎわいの陰で..自由を奪われた国・カンボジアの真実』と併せてご高覧いただくことができましたら幸いです。

12 December 2020
『自由を奪われた国・カンボジアの真実』第5話
私の新たな新聞連載『自由を奪われた国・カンボジアの真実』の第5話をご掲載いただきました。第5話は、カンボジアで最も著名な政治評論家であり、尊敬を集める社会活動家でもあったケム・レイ氏の暗殺を描きました。ケム・レイ氏の暗殺は、一党独裁支配に突き進む近年の弾圧の流れの中で起きた、最も悲しく衝撃的な出来事でした。2016年7月10日。その一日を私は今も鮮明に覚えています。雨期の雲がプノンペンの空を覆う日曜日の朝でした。自宅で朝食をとっていたさなか、ケム・レイ氏暗殺の一報を受けた私は、現場に急行しました。彼は、プノンペン中心部のガソリンスタンドに併設されているコンビニエンスストア内にある行き付けのカフェで、背後から近付いてきた男に銃撃を受け暗殺されました。草の根の民主を根付かせようと活動し、権力の横暴に立ち向かっていたケム・レイ氏の非業の死は、カンボジアが失った希望の灯火の大きさを痛感させられる取材でした。彼の葬儀には全土から人々が駆け付け「ケム・レイさんは国を正しい道へ導くことのできる真の存在だった。彼の死は、私の人生で最も悲しい出来事だ」と口々に語り、涙を流しました。葬儀の後、ケム・レイ氏の妻と子どもたちは、迫害を逃れるために亡命。現在は特別人道ビザの発給を受けたオーストラリアで生活を送っています。秋田魁新報社とLINE NEWSを通して発表させていただいた特集記事『アンコールワットのにぎわいの陰で..自由を奪われた国・カンボジアの真実』と併せてご高覧いただくことができましたら幸いです。

19 December 2020
『自由を奪われた国・カンボジアの真実』第6話
私の新たな新聞連載『自由を奪われた国・カンボジアの真実』の第6話、最終回をご掲載いただきました。第6話は、現代版シルクロード巨大経済圏構想『一帯一路』を主導する中国を後ろ盾に、強権に突き進むカンボジアの一党独裁支配の姿と、脅迫や投獄が後を絶たない祖国の窮状を変えようと活動を続ける『救国活動の会』の皆さんの思いを描きました。救国活動の会の皆さんは、2018年の総選挙を前に、強制的に解党に追いやられた最大野党カンボジア救国党の支持者を中心に、祖国を憂う在日カンボジア人の皆さん約100人で構成されています。その代表であるハイ・ワンナーさんとメンバーのボーラさんは、政権による監視を受けながらも、命をかけて祖国の現状を変えたいと願い活動を続けています。ワンナーさんは、「自由と人権が尊重された国を正しい道へ導く政治家」としていつか国に帰りたいという夢を持ちます。ボーラさんも、「弾圧に決して屈せず、祖国を思い活動を続けたい」と前を向いています。私はこれからも、自由と平和を願う彼らの尊い思いを後押しできる存在でありたい。そしていつの日か、大きな溝が社会から消え、恐怖なき弾圧なき公正な未来がカンボジアに訪れた時、私は彼らの笑顔を一番近くで見つめ、シャッターを切っていたい。最後に、新聞連載という貴重な機会を与えていただいた秋田魁新報社の皆様と、ご高覧いただいた全ての皆様に心から感謝をいたします。本当にありがとうございました。