高橋智史/Satoshi TAKAHASHI
フォトジャーナリスト。1981年秋田県秋田市生まれ。日本大学芸術学部写真学科卒。大学在学中の2003年から、カンボジアを中心に東南アジアでの取材を開始。2007年から2018年までカンボジアの首都プノンペンに在住し、同国の社会問題、文化、歴史を広く取材。2013年からは、強権支配を加速させる政権の弾圧に、公正な社会を求めて立ち向かうカンボジアの市民運動を集中的に取材した。その写真は、国内外のメディアに掲載されている。カンボジア取材通算15年の節目(2018年)に発表した写真集「RESISTANCE カンボジア 屈せざる人々の願い」で第38回「土門拳賞」を受賞。同写真集は、フランス、アメリカ、ハンガリーなどの複数の国際写真賞も受賞した。2021年〜23年まで「高橋智史が撮る故郷秋田」を毎日新聞で、2024年7月〜8月に「漁師の肖像」を秋田魁新報で連載。カンボジアでの取材と並行し、秋田で受け継がれてきた伝統文化を見つめ取材を重ねている。日本大学芸術学部写真学科オムニバス講師(2019年〜) 。日本写真家協会正会員。
【主な受賞歴】
2007年「日本大学芸術学部長賞」
2013年「国際ジャーナリスト連盟日本賞・大賞」
2021年「パリ写真賞(PX3)プロの部/ドキュメンタリー写真集部門・金賞」
2021年「パリ写真賞(PX3)プロの部/報道写真その他部門・銀賞」
2021年「IPA国際写真賞(アメリカ)プロの部/報道写真その他部門・第2位」
2021年「ブダペスト国際写真賞(BIFA)プロの部/報道政治部門・銀賞」
2021年「ブダペスト国際写真賞(BIFA)プロの部/ドキュメンタリー写真集部門・銅賞」
2021年「ブダペスト国際写真賞(BIFA)プロの部/人物部門・銅賞」
2022年「モスクワ国際写真賞(MIFA)プロの部/報道写真部門・銀賞」
2022年「モスクワ国際写真賞(MIFA)プロの部/イベント写真部門・銀賞」
2022年「パリ写真賞(PX3)プロの部/報道写真その他部門・奨励賞」
2022年「IPA国際写真賞(アメリカ)プロの部/特集写真部門・奨励賞」
2022年「reFocus Awards(アメリカ)プロの部/報道写真部門・第3位」
2022年「ブダペスト国際写真賞(BIFA)プロの部/フォトエッセイ部門・銅賞」
2023年「reFocus Awards(アメリカ)プロの部/報道写真部門・奨励賞」
2023年「World Photo Annual(アメリカ)プロの部/報道写真部門・奨励賞」
【主な写真展】
2013年「トンレサップ‐湖上の命」(コニカミノルタプラザ)
2015年「名取洋之助写真賞受賞作品写真展」(富士フイルムフォトサロン)
2016年「Borei Keila‐土地奪われし女性たちの闘い」(ニコンサロン)
2018年「RESISTANCE カンボジア 屈せざる人々の願い」(オリンパスギャラリー)
2019年「写真集RESISTANCE出版記念写真展」(さきがけホール)
2019年「第38回土門拳賞受賞作品展」(ニコンプラザ THE GALLERY)
2019年「卒業生による木村伊兵衛賞・土門拳賞受賞記念作品展」(日芸写真ギャラリー)
2020年「光の中へ messages from the photographers」(キヤノンギャラリー)
2022年「男鹿-受け継がれしものたち-」(OM SYSTEM GALLERY)
【写真集】
2013年「湖上の命‐カンボジア・トンレサップの人々」(窓社)
2014年「フォトルポルタージュ・素顔のカンボジア」(秋田魁新報社)
2018年「RESISTANCE カンボジア 屈せざる人々の願い」(秋田魁新報社)
【新聞連載】
2007年~2011年「素顔のカンボジア」(秋田魁新報社)
2020年「自由を奪われた国・カンボジアの真実」(秋田魁新報社)
2021年〜2023年「高橋智史が撮る故郷・秋田~受け継がれしものたち~」(毎日新聞)
2023年「権力の世襲-ルポ・カンボジア政治と人々」(秋田魁新報社)
【メディア出演歴・講演】
NHK「ニュースウオッチ9」、NewsX、NHKBS1「キャッチ世界のトップニュース」、NHKBS1「国際報道2018」、NHK秋田放送「インタビュー」2018、NHK秋田放送「インタビュー」2017、J-WAVE「JAM THE WORLD」、ABS秋田放送「news every」、ABS秋田放送ラジオ、AKT「秋田人物伝」などに出演実績がある。故郷秋田、東京を中心に小学校、中学校、高校、大学、専門学校、NGOなどでの講演を多数行っている。
【パーマネントコレクション】
2019年「土門拳記念館」に「RESISTANCE カンボジア 屈せざる人々の願い」の写真作品群が永久収蔵。
初めてカンボジアに降り立った2003年の9月末、あの日のことを今もはっきり覚えている。スコールで冠水した道路には、無数のバイクやトゥクトゥクが水しぶきをあげて勢いよく行き交い、子どもたちはその脇で無邪気に水遊びをしていた。生活に密着している市場やひしめく屋台からは各種クメール料理が混然一体となって香りたち、夕食の食材を買い求める人々で溢れていた。活気に満ちた夕暮れの街に人々の生きる躍動が強烈に映え、幾度もシャッターを切った。その陰では、地雷で手足を失った戦傷者やストリートチルドレンが、国家の悲劇の歴史を背負いながら静かに生きていた。届かぬ彼らの願いを伝えたいと決意し、大学卒業後、すぐに移り住んだ。
2003年から20年が過ぎ、政治亡命者さえも生み出す状況となってしまった近年のカンボジアでの取材は、正に激動の時間だった。38年間の強権支配を築く政権の横暴に、異を唱える最大野党が解党させられ、主要英字紙は廃刊に追い込まれ、政治評論家が暗殺され、ジャーナリストや活動家、そして市民が次々と投獄される。その結末は、立ち上がる人々を社会から一掃して断行された2018年の総選挙での、新たな一党独裁の幕開けだった。息の詰まるような抑圧と緊張の日々は、ポル・ポト政権、内戦後、困難の中で懸命に積み重ねてきたはずの民主が破壊されていく様を、一つ一つ見せつけられるような時間だった。
公正な社会を求め、大きな力に命をかけて立ち上がり続けた人々は言う。
「私たちが闘う理由が分かりますか?それは子どもたちの未来のためです。祖国から弾圧を受け、恐怖で締め付けられるような未来ではなく、自由を享受し安心して生きられる。そんな未来のためなのです。子どもたちには、そのような国で生きてほしいのです」
私はこれからも、人々の尊い願いに心を寄せ、写真の力を信じ、彼らの意志を伝え続けていきたい。そしていつの日か、大きな溝が社会から消え、彼らの望む公正な未来がカンボジアに訪れた時、私は彼らの笑顔を一番近くで見つめ、シャッターを切っていたい。
Satoshi Takahashi is a Japanese photojournalist.
He was born in 1981 in Akita, Japan.
He studied photography at Japan University College of Art Department of Photography. Satoshi began his career as a freelance photojournalist in Cambodia since 2007. He had spent 11 years in the country covering social issues.
In October 2018, Satoshi went back to Japan and currently he has been focusing on documenting stories of vanishing cultures in Akita prefecture concurrently with covering Cambodia. His photos have been published in newspapers, magazines around the world.
In March 2019, Satoshi received the "Domon Ken Award" for his latest photo book "The Indomitable Spirit of the Cambodian Resistance" that is a compilation of his work in Cambodia from 2013 to 2018, covering the social movements to struggle against the autocratic government. This award is one of the most celebrated documentary photography awards in Japan, and the book was featured as a permanent collection of the Ken Domon Museum of Photography. And also, the book received several international photography awards, including The Prix de la Photographie, Paris (PX3), International Photography Awards (IPA), Budapest International Foto Awards (BIFA) and Moscow International Foto Awards (MIFA).
【Prizes and Awards】
2014: Younosuke Natori Photography Award
2016: Miki Jun Inspiration Award
2021: PX3-Gold Award in Book/Documentary
2021: PX3-Silver Award in Press/Other
2021: IPA-2nd Place in Editorial/Press/Other
2021: BIFA-Silver Award in Editorial/Political
2021: BIFA-Bronze Award in Book/Documentary
2021: BIFA-Bronze Award in People/Wedding
2022: MIFA-Silver Award in Editorial/Personality
2022: PX3-Honorable Mention in Press/Other
2022: reFocus Awards-Bronze in Photojournalism
2022: BIFA-Bronze Award in Editorial/Photo Essay
2023: reFocus Awards/World Photo Annual-Honorable Mention in Photojournalism
2023: PX3-Honorable Mention in Press/Feature Story
2024: reFocus Awards-2nd Place Overall
【Photo Exhibitions】
2013: Life on the Tonle Sap Lake
(Konica Minolta Plaza in Tokyo)
2014: The Real Cambodia
(Sakigake Hall)
2015: The Struggle for Democracy-Younosuke Natori Photography Award Winning Photo Exhibition
(Fujifilm photo salon in Tokyo/Osaka)
2016: Fight for Land Rights-Miki Jun Inspiration Award Winning Photo Exhibition
(Nikon Salon in Tokyo/Osaka)
2018: The Indomitable Spirit of the Cambodian Resistance
(OLYMPUS Gallery in Tokyo/Osaka)
2019: Domon Ken Award Winning Photo Exhibition
(Nikon Plaza in Tokyo/Osaka)
2019: Domon Ken Award Winning Photo Exhibition
(Ken Domon Museum of Photography)
(OM SYSTEM Gallery)
2023: Oga Peninsula
(Sakigake Hall)
【Photo Books】
2013: Life on the Tonle Sap lake
2014: The Real Cambodia
2018: The Indomitable Spirit of the Cambodian Resistance
【Permanent Collections】
Title: The Indomitable Spirit of the Cambodian Resistance