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Satoshi Takahashi

新たな写真集の出版を目指して

更新日:3月22日



2023年12月31日。男鹿半島安全寺地区のナマハゲ行事を取材させていただいた。安全寺地区は、ナマハゲの住まう地と言われる山岳信仰の霊場・男鹿三山(真山・本山・毛無山)の麓に位置する美しい里山。安全寺地区のナマハゲは『戻りナマハゲ』と言われる。かつてナマハゲ行事は『小正月』の1月15日に行われており、15日に『真山』 (お山)から降りてきたナマハゲが男鹿半島一帯を巡り、16日にお山へ戻る途中、お山の麓に位置する安全寺地区に立ち寄るとの考えから、そのように呼称されるようになった。


 


2023年12月。ハタハタを求め、凍てつくような海を進む『第八長洋丸』船長の天野さん。過去3年間、私の取材を受け入れていただいている。天野さんのお姿から、故郷秋田の漁師たちがハタハタにかける強い思いを学ぶ。天野さんはじめ、第八長洋丸の漁師の皆様には、感謝してもしきれない。秋田の厳しい冬に、幸をもたらしてきた季節ハタハタ漁。繁栄、乱獲、禁漁の歴史を刻みながら、回復と安定に向けた取り組みは今も続く。冬季雷の轟きと、大しけと共にやって来ると伝わる神の魚ハタハタは、来訪神ナマハゲに捧げられる神聖な魚となる。男鹿半島の人々はハタハタを用意し、大晦日の夜にナマハゲを大切に迎え入れる。そして、ナマハゲによって厄災が祓われ、新たな一年の五穀豊穣、無病息災を願う。


 

私がカンボジアに暮らしていた2016年の一時帰国を機に取材を開始した故郷秋田・男鹿半島での取材。毎日新聞紙面で2021年から約2年間行わせていただいた新聞連載『高橋智史が撮る故郷・秋田~受け継がれしものたち~』では、男鹿半島を始めとした秋田県での取材を本格的に開始しました。新型コロナウイルス禍での難しい社会状況の中で、私の取材を受け入れていただいた皆様には感謝の思いしかありません。2022年と2023年には、季節ハタハタ漁とナマハゲ行事を軸とした写真展を、新宿の『OM SYSTEM GALLERY』と『さきがけホール』でご開催いただきました。






雷神が遣わす神の魚・ハタハタを追い求める『季節ハタハタ漁』と、人々に無病息災と五穀豊穣をもたらす来訪神『男鹿のナマハゲ』。秋田を代表する二つの営みを中心に、カンボジアでの取材と並行しながら男鹿半島での取材を今後も続けます。そして、受け継がれてきた伝統と共に生きる人々の願いを一冊の写真集としてまとめ、後世に伝える一助となれるように、シャッターを切り続けていきたいと決意しています。

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